沖田×華『透明なゆりかご』のレビューと感想
沖田×華『透明なゆりかご』のレビューと感想になります。
『透明なゆりかご』のレビュー
本屋で見つけて、
5冊すべて衝動買いしてしまいました。
自身がアスペルガー症候群であると公表する沖田×華さんの作品です。
このペンネームは、「起きたばっかり」に由来するそうです。
沖田さんは、
小学4年生の頃に学習障害、注意欠陥多動性障害、いわゆる、ADHD。
中学生の頃にアスペルガー症候群と診断されていたそうです。
当時はそれを認めておらず、成人してから自覚していったそうです。
それから、様々な経験を経て、
漫画家になり、昔、働いていた産婦人科の話を漫画にしたそうです。
そんな沖田さんが描くこの漫画は、
どこか自分に冷めているところがあって、
どこか独特にずれているところがって、
でも、人間の感情の奥のどこかをぐっと動かす何かがある。
そんな漫画です。
私は、発達障害の改善や治療の最終的なゴールは、
その人らしく生きていけること、だと思っています。
多動性や衝動性、過眠症や、若年性の健忘症といったものが、
多少、残ったとしても、その人が自分を認め、自分らしく生きていけること。
それが大切だと思っています。
そして、発達障害を理解し、認めてくれる人が増えていってくれたらと思います。
全ての人が理解者にならないし、なるはずもないですが、
発達障害のことがわかれば、理解してくれる人はまだまだいると思っています。
医療の現場、産婦人科という命の現場、
作家の発達障害、そして、沖田さんは言及しないけれど、
産婦人科で起こる様々な問題が、「発達障害」に起因する。
そんなことを考えさせられる本です。
1巻ずつのレビューもする予定ですが、
まずは、全巻を読んでのレビューです。
この本の1つのテーマには、「命」というものがあります。
そして、
生まれて生きることができた「命」
生まれることが許されなかった「命」
生まれてほしかったのにそれができなかった「命」
そこには、様々な「命」があり、
そのすべての「命」には、意味があったのだと思わせてくれます。
神田昌典先生など、著名なビジネスパーソンが、
人の命には意味があり、あなたにも生まれてきた意味がある、ということを本で言います。
私は、最初、それを読んだとき、綺麗ごとだと思っていました。
でも、それはきれいごとでもなんでもなく、
全ての人が持つ個性は、それを活かすことで、何かの「意味」が生まれてくる。
誰かの役に立つ、誰かの生き方を変えることができる「力」がある。
そう、「透明なゆりかご」を読んで、
心でわかったんです。
泣ける、とか、感動する、とかそういう薄っぺらい言葉ではなく、
そこにある「命」の意味。
それがわかるものでした。
沖田さんは多数の発達障害を抱えています。
しかし、それが沖田さんの才能を支えるものになっています。
だから、発達障害を持つすべての人に希望がある、
というような楽観論を言いたいわけではないです。
そうじゃないんですが、それでも、
人から変だと言われたり、昔の一時期に人からいじめられたり、
そんなことを言われたり、されたりする部分って、
実は、自分の才能だったり、あなたの「強み」だったりする。
そんな風に思うんです。
いろんな分野で活躍される人の多くが、
いじめや差別、子どもの頃の不快な思い出を持っています。
狙って、それを持った方がいいとは言いません。
ですが、それがあなたの才能、未来への懸け橋の土台になっている。
それもまた、事実だと思うんです。
この作品を読むことで、
発達障害を持っていようがいまいが、
今、苦しんでいること、今、悲しんでいることは、
きっと、あなたや私の力になる。
そんな風に私は思えました。
そして、思うことは、
「命」はすごいということです。
昔、ジブリの「もののけ姫」を見たときに、
私の心に残ったのは、
シシガミとか、サンとか、
アシタカの凄さじゃなくて、
最後に、村人の奥さんが「生きてりゃなんとかなる!」って言ったんですよね。
そんな綺麗ごと・・・・って思っていましたが、
これ、本当ですよね。
「生きてりゃなんとかなる!」
なんですよね。
命はすごい。
そんな言葉しか浮かばないんですが、
命のすごさ、すごみ、それがズンって伝わってくる作品です。
デメリットは??
画は決して上手くありません。
編集で整えられているわけでもありません。
綺麗な漫画しか読めないという人、
許容範囲の狭い方には読みにくい漫画かもしれません。
読んでよかった??
出会えてよかった、そういう本です。
なぜか、この歌が私の中に流れます。
中島みゆきさんの「時代」です。
人はどんな時でも「生きていかなくてはいけません」
今は幸せそうに見える人も、
絶対に、何かしらの苦労を乗り越えてきています。
私も、時に襲ってくる、
1日中の吐き気、不安感という症状があります。
一時は、1年以上、その症状が毎日続いていました。
私も地獄のような毎日でしたが、
それがいつまでも続くと思っていましたが、
きっかけがあって、その毎日を脱出しました。
やっぱり、そんなことがあったって、
話せる日が来たんですよね。
この本は産婦人科の日常をつづった漫画なんですが、
「きっと、よくなる」
「つらい毎日も、いつか笑って話せる日が来る」
そんな思いになれる本なんです。
漫画版「時代」なんですよ。
私の中では。
ほんと、勝手なレビューなんですけど。
みなさんには、1度、この本に触れてほしい。
すべて読まなくてもいいです。
ネットの広告で見かけた話だけでもいいです。
今、苦しいこと、悩んでいること、悲しいことがあったら、
この漫画を読んでほしい。
命はすごい、
そして、あなたが生まれて救われた人がいる、
それが「事実」だとわかると思います。
そして、長くてつらい夜が続いても、きっと、「朝はやってくる」「きっと、よくなる」
それが、わかる漫画なんです。