発達障害を悪化させる親〜子どもの発達障害を改善させるには
子どもの発達障害はなぜ悪化する?
星野仁彦さんの本などを読んでいると、
発達障害の親を持つお子さんの発達障害は、
ほとんどの場合で、「悪化している」という意見に出会います。
星野仁彦さんは診療内科医です。
家庭内ではどうしようもなくなって、星野仁彦先生に助けを求める。
そんな家族も多かったでしょう。
だから、発達障害が悪化している、という家族ばかり見ている可能性もあります。
ですが、私も塾という子どもとたくさん接する現場にいて、多くの子どもたちを見ていると、
親のせいで発達障害が悪化している例はたくさんあります。
特に、お父さん、お母さん自身が「自分の発達障害に気づいていない」場合に、お子さんが発達障害を悪化させている例が目につきます。
お子さんの発達障害を悪化させているのは、
実はお子さん自身が理由ではなく、お父さん、お母さんの「やり方」に問題がある場合も多いのです。
例えば、
学校で協調性がないお子さんの場合、お父さんやお母さんの話を聞くと、
こんなことがわかります。
「仕事に出る前に、食器などの洗い物を済ませたいので、
子どもは6時半には起きるようにさせているんです。」
そして、そのお母さんの悩みは、お子さんの協調性のなさや、順応性のなさ、でした。
その子はとても正義感が強く、
教師や大人のミスや間違いに非常に厳しく、よく学校でトラブルになっていました。
自分の考えややり方を、どうしても押し通してしまうんです。
そういうお子さんはよくよく聞くと、
お父さん、お母さんが、日常の家のルールを決めすぎていて、子どもたちが「こうしたい」という気持ちが、
入る隙間がまったくありませんでした。
もともと、お父さんも、怒りっぽく、昔は、よくキレてまわりを困らせていたそうです。
お父さんの特性を受けついでしまい、
さらに、お父さん、お母さんの絶対的な家庭のルールのせいで、
彼は、ほどほど、という力加減を学ぶことがなく過ごしてしまい、学校でトラブルになったと考えられます。
こういう決まりだから、こうしなくてはならない、
そういう状況にご家庭がなっているせいで、「融通」という概念が育たなくなっていたんです。
だから、どうしても、まわりに上手く溶け込めずにいました。
他にも、こんな例がありました。
親子でアスペルガー症候群の疑いがあるケースです。
小学5年生の大人しい男の子が私の塾にやってきました。
人と話すよりも本が大好きで、
難しい戦国時代の知識を披露してくれたりもしました。
でも、普段は大人しく、話してみると、独特な考えを持っているお子さんでした。
ただ、それ以上に独特だったのは、お母さんでした。
お母さんは、男子校の私立中学を強く希望されていて、その理由を聞いてみると、
「彼に彼女ができたら、そのデートの費用を払うのは親じゃないですか?
男性がおごるとしたら、彼女の分まで、私たちが払うことになるでしょ?」
というのです。
いろんな考え方があっていい、と私は思います。
でも、中学生で「恋愛」をすることは、
人の気持ちやそのあとの結婚生活などで、生きてくるものもあります。
「お金を出したくないから」という理由で、
中学生ではおつきあいをしてほしくない、だから、男子校の私立中学校に入れるという、
お母さんの考え方は、私には共感できませんでした。
この場合に、何が怖いかというと、
その親の独特な感性でできたルールに子どもがしばれれてしまうということです。
アスペルガー症候群の方は、年を取らないといいます。
それは、見た目が老けないというわけではありません。
見た目は加齢していきますが、
精神的には、天真爛漫なまま。
親であろうとする意識、
大人であろうとする意識、
子どものために自分が変わろうという意識、
全くなく、自分がしたいようにしようとします。
私がこのお母さんと話していて、覚えていることがあります。
私が本が好きだ、というと、
そのお母さんが、「あなた、絶対に、奥さんを大変な目にあわすわよ。」というのです。
その意味がわからずに、理由を聞くと、
私の夫はね、本が大好きなの。
でね、何か知りたいって思うと、アマゾンで出てくる関連本をすべて買おうとするの。
それでね、私が止めると、
「もしかしたら、この中に、とても大事な知識や情報があるかもしれないだろ。だから、全部買うんだ!」って言うの。
だから、私はね、図書館に行って、
良さそうな馬をピックアップしてから、夫に紹介するの。
ね、大変でしょ。
あなたの奥さんもそうなるのよ。
と真面目に言われました。
アマゾンに出てくる関連本を全部買おうとする旦那さんがまずなかなかいないですし、
それで、旦那さんを納得させるために、図書館に行くお母さんもなかなかいません。
それを、「本が好き」というだけで、
私にも当てはまると思っているお母さんの感性がすごいというか、「変わっている」と思いました。
そして、その自分の「変わっている」完成を疑わない・・・・
結局、そのお母さんの息子さんは、
お母さんの監視がどんどん厳しくなり、ストレスで抜毛症がきつく出てしまい、
塾をやめていきました。
発達障害をお子さんが持つことは、実は不幸なことではありません。
お父さん、お母さんがご自身の「発達障害」に気づいていないことが不幸の始まりです。
ご自身の発達障害を疑うこと、
親として大人として、自分は大丈夫なのか、という気持ちを持つこと。
それが一番だと思います。