『アスペルガー症候群と高機能自閉症の理解とサポート』レビュー
アスペルガー症候群と高機能自閉症の理解とサポートのレビューです。
『アスペルガー症候群と高機能自閉症の理解とサポート』
著者・杉山登志郎
2002年12月24日発行
出版社・学研
ちょっと怖い感じの表紙の、
タイトルからわかる通り、真面目な本です(笑)
最近、発行される発達障害に関する本は、
ポップな感じが多かったので、シリアスな表紙ですね。
『発達障害の子がぐーんと伸びる心と体の育て方』の表紙と比べると、よくわかります。
表紙通りの重い内容も続きます。
発達障害児(文中の言葉をそのまま使っています)と真摯に向き合ってきた著者たちの、
偽りのない現場の様子。
どのように自閉症と向き合い、
どう解決していったか、「発達障害でもそれを個性と受け止めてがんばろう!」みたいなただ明るいだけのメッセージではなく、実際に、発達障害と向き合うことの厳しさ、現実、それでも、希望はあるのだ、というメッセージが伝わってきます。
綺麗ごとだけではない、現場のリアルが伝わってくる本です。
この本の良さを3つにまとめると・・・・
本のデータとして、著者・杉山登志郎氏と私は書いていますが、
厳密には編集者です。
いろいろな方の発達障害と向き合ってきた実践報告が、豊富に載せられています。
様々な学年、様々な支援方法。
困難さの先にある希望、が伝わってくる内容です。
発達障害の方本人、サポートをする家族、そして、医師らの支援。
この3つの生々しいレポートがここにあります。
この本は、ケーススタディを紹介しながら、
問題行動へ、このように対処したら、こう変わったという実践例も豊富にあります。
発達障害の難しいところは、
ひとりひとりの治療方法、対応方法が違う、ということです。
特に、自分の思いを言葉・行動で表せられない子どもの支援は、大変です。
こういったケーススタディをたくさん知れることは、
こうやったらダメだったけれど、こうやってみたら上手くいった、のように、
複数のアプローチから対応できるようになります。
豊富な発達障害への支援実践例の中から、お子さんにあったやり方を試してあげることができます。
最後の章では、杉山先生と発達障害を持ち、
社会に出て、働いている人たち、その親の対談があります。
発達障害を認めながら、社会に出ている人とその家族の生の声が出てくるのは、非常に貴重です。
発達障害の治療を長く受けても困難なこと、できないこと。
でも、そういうことがあっても、
たくましく生きているという事実。
この本でしか出会えないリアルがそこにあります。
デメリットは??
少し古いことでしょう。
まだ、手探りで向き合ってきたという感じがあるので、
粗削り、もっと、スマートにできなかったのか?
という感はあります。
けれど、10年以上前でも、
発達障害に向き合う人たちの気持ちさえあれば、
これだけのこともできるのです。
今は、治療方法、改善方法がかなり確立しつつあります。
けれど、どれだけ、治療方法が確立しても、
「気持ち」は、本人と家族の前向きな気持ちがなければどうにもなりません。
そこに気づけるかどうか、が大切になります。
購入して良かったところをまとめると・・・・
やはり、豊富な実例集は、勇気づけられますし、
発達障害の治療・改善の現場は、生易しくはないという現実がわかります。
でも、それでも、
前向きな「気持ち」があれば、状況は好転させることができるんです。
そして、発達障害の方が、
前向きに楽しく生きられるように支援しようとする熱い人たちが大勢いることにも、
励まされます。
あなたはひとりではない。
悩んでいるひともひとりではない。
必ず希望はある。
そう感じられる1冊でした。
発達障害支援の現実と希望を見たいなら、おすすめの1冊です。
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気になる方はお早めに。