『脳の強化書』のレビュー【脳全体からお子さんの個性を考える】
脳の特徴・特性を知ることで、
お子さんの発達のサポートがしやすくなります。
タイトル:『アタマがみるみるシャープになる!!脳の強化書』
著者:加藤俊徳
出版社:あさ出版
発行年:2010年3月19日
発達障害とは脳の機能障害である。
そう言われて長いと思います。
そうではないという見方が出てきても、
ほとんどの人は「脳の機能障害」思っている。
だけど、誰も脳のどういう状態が「脳の機能障害」なのかは考えていません。
私はそれが心配なんですね。
加藤俊徳先生のこの本は、発達障害について書いた本ではありません。
ですが、今一度、脳とは何かを知っておくことは、
発達障害のお子さんへのアプローチ方法に新しい選択肢をくれると私は思っています。
一時期、脳トレなどが流行し、廃れていきました。
おそらく思うほどの「効果」がなかったからでしょう。
加藤俊徳先生のこの本を読めばその理由がわかります。
「脳トレ」は脳の局所的なトレーニングでした。
でも、それは意味がありません。
脳はいろんなところでつながっています。
脳だけではなく、体のすべてはつながっています。
そのつながりを意識しないときちんと鍛えられません。
たとえば、腕の力をあげたい場合は「懸垂」がいいと言われます。
それは、一部だけを鍛えると、逆に手から腕や肩にかけてのつながりを壊してしまうからだそうです。
脳にも同じことがいえます。
脳の場合、つながりを無視して一部だけが発達してしまうと、発達障害と診断される症状として出てきます。
脳の過発達は、神経の過発達を生み、それが人によっては発達障害の症状として出てくるのではないか?
私はこの本を読みながら、そんなことを考えていました。
加藤俊徳先生は脳を8つのエリアにわけて考えます。
(もちろん、綺麗にエリアのラインがあるわけではなくおおよその場所になります。そして、そのつながりが強化されると、いわゆる優秀な脳と呼ばれる脳になるそうです。)
@思考系
A感情系
B伝達系
C理解系
D運動系
E聴覚系
F視覚系
G記憶系
発達障害の方って、たとえば聴覚が過敏だったり、視覚から入る強い刺激が苦手だったり、運動が苦手だったり、ついつい1つの記憶にずっとこだわってしまったり、というのがあります。
加藤俊徳先生のこのわけかを理解すると、どこかの分野が過発達して、
さらにどこかの分野の発達が妨げられると「発達障害」と診断される症状が出てくるのがわかりますね。
本当は120までわかれるそうですが、機能別に加藤俊徳先生が8つにくくってくれています。
このつながりを強化していくこと。
それを目的に書かれたのがこの『脳の強化書』になります。
そして、お子さんの様子を見ながら、お子さんが過発達させている脳の機能・未熟な脳の機能の場所を把握し、
効果的なアプローチをしていくということができるんですね。
では、この『脳の強化書』のいいところを3つにまとめます。
1、簡単
8つの脳の分野それぞれを鍛えるノウハウが、
実はすごく簡単なんです。
しかも、1つだけではないから、実行しやすいものから選べるというようになっています。
どれもすぐにできそうなものや誰かがそういえばやっていたものになっています。
だから、誰でもできる。それがいいですね。
2、脳の機能
短いながらも脳の機能や脳の特徴、脳という臓器が人間にとってどういうものか。
これがわかります。
そして、MRIを用いながら、
脳をきちんと鍛えるなら、きちんと脳は変わっていくことが説明されています。
これは勇気がもらえますね。
3、成長
脳は一生成長する。
だからこそ、一部分集中型の鍛え方や日々の過ごし方では、
自然と脳はゆがんでいくんです。
人間は身体もゆがみますし、脳もゆがむんです。
その事実を知り、あまり意識していないところの成長をうながす。
知識こそ、宝である。
まさに、そう思わされる本ですね。
デメリットはある?
ポップすぎるというところでしょうか?
わかりやすすぎるために、逆に権威的な魅力が減っているという感じでしょうか?
すごいことが書いてあるんですが、
わかりやすくなじみやすいので、凄い本と思いにくいところはデメリットかもしれません。
買って良かった?
発達障害のお子さんを持ち、なんとかしてあげたいと思っているなら、絶対に手に入れてほしい本です。
発達障害の改善アプローチって、ブレインジムとか金魚運動とか、
こう全体にぼやんとしたアプローチというのが多いです。
それはそれで効きますが、お子さんのこれからを思うと、
脳のつながりを強化し、脳そのものを鍛えていくことが必要だと思っています。
その意味で、この本が家に1冊あれば心強いですね。
鍛えたいところを鍛えるのにもいいですし、
過剰すぎるところをおさえるために周辺を鍛えるというのにも使えそうです。
できるところからいろんなことをさせてほしいですし、
実践する中でお子さんの興味を持つものもでてくるかと思います。