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『女性のアスペルガー症候群』のレビュー

『女性のアスペルガー症候群』のレビュー

 

書籍データ

タイトル:女性のアスペルガー症候群
著者(監修):宮尾益知
出版社:講談社
発行年:2015年3月10日

 

 

私はこの本を読むまで、
ADHDやアスペルガー症候群といった、
発達障害の中で名前がつけられているものは、症状が1つだと思っていました。

 

AかつBかつCという条件を満たせば、
それは、「発達障害」の中で、ADHD、アスペルガー症候群といった、
そういう名称をつけられる、そう思っていました。

 

私は、宮尾先生の書く、
この「健康ライブラリー イラスト版」シリーズを読んで、
ある症状が強く出たり、ある年代で壁にぶつかったり、
アスペルガー症候群といっても、様々な症状が人によって出てくることがわかりました。

 

 

 

病院では診断されないだろうけど、
アスペルガー症候群の特性によって、今後苦労するだろう子もわかるようになってきました。

 

 

つまり、あ、アスペルガー症候群だ、と、
ネットで書かれている情報でわかってしまうものから、
「非言語的なコミュニケーション能力」が低いという点だけの子もいる。

 

そういうことに気がつけるようになったんです。

 

 

そう思って、私のまわりにいる子どもと接していると、
空気が読めない、言葉がわからない、という症状が、
単なる経験不足、知識不足、そうした理由だけでは説明できない状況があることに気がつきます。

 

 

とにかく、アスペルガー症候群の症状が見られるお子さんは、「ちょうだい」と言います。

 

小学生だろうが、中学生だろうが、高校生だろうが、です。

 

 

小学校の国語の教科書に、
「1つの花」という作品があります。

 

 

 

そこで、幼い女の子の描写が描かれます。

 

 

そこに描かれる女の子のゆみ子は、「1つだけちょうだい」が口癖なんです。

 

 

小さい子は、「ちょうだい」と言うのです。

 

 

それは、戦前、戦中、戦後〜現代に続くまで、
変わらない感覚なんでしょう。

 

 

国語の教科書を見ていると、
こういうテンプレートが子どもで、
こういうテンプレートが小学生で・・・・というのが見えてきます。

 

 

小学校2年生で習う「お手紙」という作品でも、
特に何をしているわけでもないのに、手紙を欲しがるがまくんが描かれます。

 

 

私は今読むと、
がまくんが何もしていないのに、「お手紙」は欲しいという描写に違和感を覚えるのですが、
自分が小学校で読んでいた時には、何も感じませんでした。

 

おそらく、小学2年生くらいだと、
無条件で「欲しい」というのは、普通、という感覚なのでしょう。

 

 

それが、中学生くらいになると、
あの暗い作品を読むことになります。

 

 

「少年の日の思い出」ですね。

 

自分の思いを我慢できずに、
欲しいものを手に入れてしまうと、相手から馬鹿にされるのではなく、
もう相手にもされない、鼻で笑われるという屈辱を味わうというかなり苦い物語を読まされることになります。

 

 

小さい子がちょうだい、というのはいいのですが、
中学生を超えるくらいになってくると、「ちょうだい」だけではだめで、
自分で何かをしなければならなくなります。

 

 

小学校高学年で読む「わらぐつの中の神様」も、
欲しいものを手に入れるために、自分でわらぐつを売る少女が描かれます。

 

 

前置きが長くなりましたが、
ものを「ちょうだい」というのは、それだけ幼稚な行為ということです。

 

 

でも、アスペルガー症候群の症状がきつい子は、
何歳になってもちょうだいと言います。

 

 

チョコちょうだい
前買ってきたお菓子ちょうだい
●●ちょうだい

 

 

と、言います。

 

 

昔の自分なら、この本を読む前の自分なら、
「子どもか」の一言で、相手を黙らせていました。

 

 

でも、この「女性のアスペルガー症候群」を読んでから、
発達障害によって、年齢相応の社会的なコミュニケーション能力の欠如があるのかもしれない。

 

 

そう子どもたちのことを見られるようになりました。

 

 

そうなると、対応が変わります。

 

その子によっては、こういう状況で、そういう発言は良くないと言語化してあげることもありますし、
あえて、みんなの前で恥をかかせることもあります。

 

もちろん、みんなと言っても、その子の事をわかっている子たちの前だけで、ですが。
まわりのみんなが「ちょうだい」となんでもいう自分に対して、
どんな反応を見せるのかを、あえて見せたりします。

 

 

良い子たちなら、
「お前、俺らの前ならいいけど、普通の奴の前で言ったら、やられるで〜」と反応して、
「せやな〜」といって、返してくれます。

 

 

言葉だけではなくて、
状況によって、彼らに伝える方法を変えることができるようになりました。

 

 

お菓子ちょうだい、と言ってくる子どもに対して、

 

我慢しなさい、と注意するだけでは、
その子自身の成長は、望めません。

 

 

なぜ、ダメなのか。
どういう時に言うべきなのか。
どういうものにちょうだいと言ってはいけないのか。

 

 

それを説明する必要があります。

 

 

説明するときも、
その子の年齢に応じて、わざとおおげさに真剣に伝えるときもあります。

 

人があなたに注意をするときは、声色が変わるというのを、
伝えるようにします。

 

 

アスペルガー症候群の症状がどんなものかを理解するだけではなくて、
将来的にどういうところでつまづくかがわかるので、
先に、その部分を注意してあげられるようになりました。

 

 

 

この本は、わかりやすいんですが、
時系列で、将来どういうところで女の子がつまづくかがすぐにわかるので、
前もって、つまづきを防げるところがいいです。

 

 

もちろん、人生に壁は出てくるものですが、
あえて、人に嫌われる必要はありませんよね。

 

避けられるものは避けた方がいいです。
アスペルガー症候群の症状がきつくなると、睡眠障害、摂食障害、といった症状も引き起こすことがあります。

 

 

 

では、この本の特徴を3つにまとめます。

 

 

1、段階

 

 

発達の段階に応じて、
どういう部分で困難に出会うのかがわかりやすく書かれています。

 

 

生きていけば、どんな人も、
何かしらの壁に出会うわけですが、あまりに壁が多いと心が折れてしまいますよね。

 

アスペルガー症候群の女の子は、
年齢を重ねれば、重ねるほど、同性、異性のトラブルや、
年下、年上とのコミュニケーションで、トラブルを抱えやすいです。

 

そういった、人間関係のトラブルを未然に防ぐこともできるのがいいですね。

 

 

2、具体的な事例

 

 

具体的な事例が豊富です。

 

体調不良になってしまうケース。
拒食症になるケース。
コミュニケーションでトラブルになるケース。

 

そういった1つ1つの事例が細かくあるので、

 

この子はここは当てはまらないけど、
ここは当てはまるので、ここを中心に注意してみてあげよう。

 

 

ということができるようになります。

 

 

薄い本だからと侮らないでください。

 

かなりの量が載っています。

 

 

3、網羅

 

小学校前から、結婚後についての問題を網羅しているので、
これ1冊で、女の子のアスペルガー症候群とは何なのか。

 

  • どういう問題が起きて、
  • どういうところで問題が長引いて、
  • どういう解決方法があるのか、

 

それを網羅しています。

 

 

学術的にアスペルガー症候群を知りたいなら、
岡田尊司さんの「アスペルガー症候群」を読むべきですが、
症状から、問題、解決策を知りたいなら、この本1冊でいいですね。

 

 

 

デメリットは??

 

 

治療方法が対処的なものしかないのは、
少しだけ残念かなと思います。

 

 

アスペルガー症候群の子が、
体調を崩しやすかったり、極端にストレスに弱かったり、
私はかなりの確率で、お父さん、お母さんの食事に問題があると思っています。

 

 

 

 

聞いていると、
子どものころから、外食やマクドナルドなどの食事が多く、
バランスのいい食事をきちんと摂っていないことが多いからです。

 

この部分についての言及がないのは残念でした。

 

でも、1000円程度の本で、
この内容は、素晴らしいです。

 

 

買って良かった??

 

 

アスペルガー症候群は、
男性と女性で、見えてくる少女も抱える悩みも違います。

 

 

暗黙のルールが読みにくい、
社会性が身につきにくい、

 

といった特徴は共通していますが、
それがどんなふうに表に出るのか、
どんな風に問題化するのか、

 

 

女の子のアスペルガー症候群が抱く、問題、悩みそれらを知る必要があります。

 

その具体例が、
イラストと一緒にあるので、女の子が抱えるデリケートな問題を知ってあげることができます。

 

 

お子さんの発達障害の改善は、
まずは、理解から始まっていきます。

 

 

  • どうして、こうなるの?
  • どうして、そんなことを言うの?
  • どうして、こんな簡単なことができないの?

 

 

そうやって、私たち大人はイライラしますし、
家族であれば、無遠慮にお父さん、お母さんも、お子さんも傷つけあいます。

 

 

そうやって家族関係がこじれてしまうと、
さらに、発達障害は加速度的に悪化してしまいます。

 

 

理解することが、イライラすることを防ぐ一番の方法です。

 

その理解することに、大きく貢献してくれる1冊です。

 

 

 

女性のアスペルガー症候群 (健康ライブラリーイラスト版) [ 宮尾益知 ]

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