『会社の中の発達障害』のレビュー&感想【けっこう本音】
『会社の中の発達障害』のレビュー&感想【けっこう本音】
私が尊敬する星野仁彦さんの新刊、
『会社の中の発達障害〜いつも嫌なことを言う上司、いつも迷惑をかける部下〜』を手に入れました。
早速、読んでみたレビューと感想を書きたいと思います。
書籍データ
タイトル:『会社の中の発達障害〜いつも嫌なことを言う上司、いつも迷惑をかける部下〜』
著者:星野仁彦
出版社:集英社
発行年:2017年9月10日
やはり発達障害がわかりやすい。
星野仁彦先生の本です。
星野仁彦先生の本はいつもそうですが、
具体例が非常にわかりやすい。
ADHDの人は、集中力がない、
とか、
アスペルガー症候群の人は、空気が読めない、
とか、
そういう情報だけでは、
社会に出て、どういう場面でどういう言動で、
発達障害だと判断すればいいのか、「わからない」と思います。
私や、私の管轄している塾に長くいる大学生は、
だいたい子どもと話して、その子が勉強する様子を見ていると、
ADHDなのか、アスペルガー症候群なのか、わかるようになります。
それは、多数の子どもたちを見る「機会」があったからです。
けれど、日本の企業の多くは中小企業ですし、
部下を10人も100人も見る人は少ないと思います。
その中で、1人でも、発達障害を持ち、それを自覚していない部下を持ったら、
- どうしてこんなこともできないのか、
- どうしてこんな常識も知らないのか、
- どうして時間すらも守れないのか、
非常に混乱し、
時には、心身の不調をきたすまでストレスを抱える人もいるかもしれません。
言葉は悪いかもしれませんが、
発達障害に迷惑をかけられる周りの人を救い上げる本。
私はこの本を読んで、そう思いました。
発達障害に関する本の多くは、
発達障害の人はこんなことに困っていて、こんなことが苦手で、こんなことに悩んでいる。
まわりから孤立する。
まわりにいじめられる。
自分に自信がなくなる。
などなど、発達障害の人に寄りそう本ばかりが出ていました。
けれど、発達障害の人が自分の障害、
もしくは、その発達障害に気づかずに悩んでいるのと同じように、
まわりも苦しんでいるんです。
どうしてあげたらいいのか、
どうしてこんなこともできないのか、
どうしたらできるようになるのか、
そんな風に悩んでいるんです。
正直に言えば、
塾に発達障害をお持ちのお子さんが来ると、「嫌だな」って思います。
でも、どこか憎めない「愛嬌」が彼らにはあり、
失礼な言動をたくさんしますが、変なところで素直だったり、純粋だったり、
ああ、まわりには彼らのこういうところは理解されないなぁ、なんて思うんです。
彼らが理解されない理由。
それは彼らの発達障害のことをみんな知らないからなんです。
今はADHDとか、アスペルガー症候群とか、発達障害とか、
そういった言葉自体は知っている方が増えています。
けれど、いったい、どういったどういう行動が、
発達障害なのか、それを理解している人はまだまだ少ないです。
実際に社会に出ている、
大人の発達障害の方の事例。
それを知ることで、少しだけ発達障害に優しい世の中になってほしいと思います。
ただ、これを読むことで、
発達障害の人ってだるいな、できるだけ会社に入らないようにしよう。
発達障害の人とかかわっても、イライラするだけだから、付き合わないようにしよう。
そう思う人も出てくると思います。
私はそれはそれでいいのではないか、と思っています。
セカイノオワリという人気バンドがあります。
その「HEY HO 」という歌にこんな歌詞があります。
テレビから流れる悲しいニュースを見て、
心が動かなくてもそれは普通なんだよ、という内容から2番の歌詞が始まります。
「誰かを助けることは、義務じゃないとぼくは思うんだ。
笑顔を見れる権利なんだ。自分のためなんだ。」
「君が誰かに手を差し伸べるときは今じゃないかもしれない。
でも、いつかその時が来るまで、それでいい」
そして、こんな歌詞が続くんですね。
この本を読んで、
私は、発達障害について何も思わない人がいてもいいし、
助けようと思わずに、できるだけ関わらないようにしよう、そう考えてもいいと思うんです。
発達障害の人なんて、
できれば自分の生活圏に来てほしくない、と思う人は、
おそらく空気が読めない人とか、少しでも気に入らない人がいれば、攻撃してしまう人でしょう。
そういう人は、向こうから避けてくれる方が、
お互いのためだと思うんです。
そして、この本を持ち、読んだ人の何割かが、
誰かに手を差し伸べようと考えたのなら、それは素晴らしいことだと思うんです。
この本の、最後に、
星野仁彦先生はこう言います。
すべての生物には一つとして無意味なものはないというのが私の持論で、人口の10%にのぼると言われる発達障害者の存在にも十分に意味があると思っています。
本書で触れたように、発達障害が疑われる偉人は数多く存在します。「普通」の人には思いつかない発想、一つのことにこだわり集中する力、過去にとらわれず、積極的に新しいことに立ち向かっていく姿勢。一時的には周囲と軋轢を起こすことがあっても、そんな彼らの存在は、長い歴史から見れば、不可欠であったわけです。
一定のルールが優先される職場において、発達障害者の周囲の人は、彼らに振り回され迷惑を被ることも多々あるでしょう。できれば距離を置きたいという感情が勝ることもあるかもしれません。
けれど今一度、彼らが本質的に抱えた個性を忖度して、排除する方向ではなく、何とか活かせる方向を見つけていただければと思います。
タイトル:『会社の中の発達障害〜いつも嫌なことを言う上司、いつも迷惑をかける部下〜』著者:星野仁彦出版社:集英社発行年:2017年9月10日
発達障害の人の言動は確かに鬱陶しいこともある。
どうして、空気が読めないのか、などなど思うでしょう。
けれど、その「空気」自体が正しいかどうか考えたことがあるでしょうか?
今、作られた常識とか、そういうものからすれば、
彼らの言動はおかしいかもしれない。
彼らの言動の方が、人間ということを根本から考えたときに、正しいということがあるのではないか?とも思うんです。
この本の中に、会社の飲み会を当日にキャンセルし、
幹事が怒ると、会費だけ払って、これでいいんでしょという態度を取った人の例が出てきます。
まあ、常識がない対応ですが、
そもそも、会社の飲み会に参加するのが当然、という勝手な常識がつくられていたのかもしれません。
事前に、飲み会の幹事が参加・不参加を聞いていれば、この人は、きちんと「行かない」と答えたかもしれない。
会費を払ったのに、さらに怒られたこの人を、
発達障害の人だから空気が読めていない、と片づけてはいけないのかもしれない。
会社の、勝手な常識、それを「疑う」きっかけになるのかもしれない。
そんな風に、読んでいて私は思ったりしました。
この本は、どこからでも読める本です。
ぜひ、発達障害のことがさらにわかりたい人は、読んでみてほしい本です。
簡単ですが、この本のポイントを3つあげます。
1、具体例
とにかく、会社の中にいる、
発達障害でまわりが迷惑する事例がたくさんあります。
ああ、いるいる、
こういう人いたら困る、
こういうケースになりそう、
そういった事例がたくさんあるので、
事前に、心構えができるのがいいですね。
2、発達障害のこともわかる
ADHDやアスペルガー症候群(ASD)の、
どういう症状か、一般的な診断基準、特徴についても、詳しいので、
今まで発達障害の本を読んだことがない人でも、
これを読めば、発達障害のことがわかります。
3、星野さんの体験記
著者の星野仁彦先生の、
自分が発達障害で困ったこと、どう克服したか、
結婚後の事、なども貴重な情報源です。
発達障害を持っていようが持ってなかろうが、
診断がはっきりされようが、されまいが、
人はいろんな経験をして、
上がって下がってを繰り返して生きていく。
それは、変わらない、ということがわかります。
そこに「勇気」をもらう人もいると思います。
私はそうでした。
買って良かった??
最初は、正直、今更?
と思いましたが、読めば読むほど、
自分の中にいろんな感情、いろんな感想が出てきました。
細かい事例がたくさんありますし、
今見ているお子さんが、将来、こうなっていくだろうという、
予測ができるようになりました。
そのために、少しずつ、
こういう言動を注意してあげようとか、
わかりやすく説明してあげようとか、
自分の中で、考え方が変化していくのがわかりました。
デメリットは??
おそらく、これを読んで、
発達障害の奴はうざいな、もう、付き合わないでおこう。
そう思う人が出てくるだろうな、ということです。
それだけ、事例が超具体的なんです。
読むだけで、似たような経験を思い出し、
いらいらする人も出てくるでしょう。
でも、それだけ、具体的で場面の事がよくわかる本だということです。
まとめ
発達障害のことをこれから勉強する人も、
もう、けっこう勉強したという人も、
どんな立場で読んでも、「学び」のある本になっています。
こんな風に社会で困るから、予防するためにも、
実際に社会でまわりを困らせる人の対処にも、
自分の嫌いな上司・部下を理解するためにも、
いろいろ使える本です。
もちろん、こちらが一方的に我慢する必要はないと思います。
でも、少しだけ、
あなたに余裕があるなら、発達障害のことを理解してみませんか?
会社の中の発達障害 いつも嫌なことを言う上司、いつも迷惑をかける部下 [ 星野 仁彦 ]