『子どもの脳を傷つける親たち』のレビュー〜親の言葉で子どもの脳の成長は止まります。
『子どもの脳を傷つける親たち』のレビュー〜親の言葉で子どもの脳の成長は止まります。
書籍データ
タイトル:子どもの脳を傷つける親たち
著者:友田明美
出版社:NHK出版
発行年:2017年8月10日
今回ご紹介するのは、
『子どもの脳を傷つける親たち』になります。
もうすでに、私がこのサイトで紹介している、
『アスペルガーADHD発達障害改善マニュアル』を手に入れた方は、
発達障害の問題が、単に遺伝とか個性とか、発達のアンバランスさだけ、ではないことがわかると思います。
問題は、心の問題、トラウマ、これらが根元にあって、
発達障害の症状とあわさって、生きづらさを感じてしまう。
まさに、現代の発達障害の問題を端的に指摘してくれている本です。
私も塾で働いていますので、
発達障害の問題・症状が出ているお子さんにたくさん出会います。
- まわりから変な子だな。
- 育てにくいと思われている。
- 急に学校から呼び出されて注意された。
そんなお子さんの話を聞くとき、
共通していることがあります。
それは、子どもがお母さんのことを信用していない、ということです。
本当に、どうやったらそこまで嫌われるのか?
くらいの勢いで、お子さんから嫌われています。
例えば、塾ではよくしゃべりますし、面白いことの1つも言うお子さんなのに、
親の前では「だんまり」して、不機嫌そうに黙っています。
もちろん、思春期の関係もありますし、成長・発達の段階で、
本当はお母さんと仲が良くても、私や他人の前では、お母さんを雑にあつかってしまう男の子というのはいます。
そういうのではなく、
本当に心の底から、お父さん、お母さんを信頼していない。
「あの人」と親を呼ぶ。
そんなケースを多々見てきました。
これは、感覚的なことだったんですが、
この『子どもの脳を傷つける親たち』によって、それが科学的にもただしいと証明されました。
この本の中では、
子どもにとって良くないことばを投げかけること。
それを、マルトリートメント(不適切な養育)と呼んでいます。
この、ネグレクトのように、明らかな子どもへの暴力や育児放棄、だけではなく、
子どもにとって良くない言葉かけ、これによっても、子どもの脳の成長が止まったり、
子どもの脳が変形することが、科学的に証明されています。
科学的に、というのは、MRIによる脳の画像診断によって、
脳が変形している、ということがわかったということなんですね。
この本によると、
親から定期的なマルトリートメントを受けた子どもは、聴覚野が【肥大化】すると書かれています。
大きくなるのはいいことでは?
となりますが、著者の友田明美先生は、わかりやすく説明します。
【肥大化】というのは、【雑木林】と言える、ということなんです。
上手く成長して大きくなったのではなく、
荒れ放題、伸び放題の、状態としてはよくない状態で大きくなっている、ということなんです。
発達障害を持っている、または、発達障害の症状が出てしまっているお子さんは、
すぐに動きますし、じっとすることができません。
誰かの声が聞こえれば、すぐに動き出しますし、
自分が好きな人の足音が聞こえると、我慢できずに、そばに寄ってきます。
人間は集中すれば、ある程度の音などはシャットアウトすることができます。
だけど、発達障害の症状が出ているお子さんはそれができない。
例えば、私が違う人と話していると、
どこからともなく、やってきて、私たちの話に加わろうとします。
そして、動かないように、自分がやるべきことをやるように注意されます。
このマルトリートメントによる脳の変形の怖いところは、
脳が変形し、普通の人が普通にできることができない、
それによって、また、お父さん、お母さんが怒ってしまって、さらに強いマルトリートメントを引き起こす。
そして、また、脳が変形してしまう。
『子どもの脳を傷つける親たち』によると、さらに、
聴覚野が肥大化するとともに、視覚野が成長しなくなる、という症状も見られるということが書かれています。
特に、夫婦間のケンカ、おそらく、いさかい、争い事をいつも目にしていると、
子どもの視覚野の成長に深刻なダメージをあたえるのでしょう。
視覚野にダメージがあると、記憶力の低下につながるそうです。
それはそうですよね。
視覚野ということは目に見えるというだけではなくて、見えたものを正常に頭の中で処理する、という働きもあります。
それがきちんと機能しないと、
見えてはいても、それを頭の中できちんと理解できていない、という状態になりますよね。
結局、理解ができていないので、記憶ができず、
勉強の成績が下がる、という状態がでてきます。
親がどんな言葉を投げかけるかによって、
子どもたちの脳は正しく成長したり、問題が出てくる脳になったりするんですね。
本当にこわい事実をつきつけてくる本です。
だけど、お子さんをすこやかに育てるには絶対に読んでおくべき本ですね。
この本の特徴を3つにまとめます。
1、科学的事実
MRIによる画像診断によって、
親の接し方と子どもの脳の成長には強い関係性がある、ということがわかりました。
NHK出版らしい、
逃げ道のない事実がそこにあります。
親の影響が強い。
子どもがどう育つかは親次第。
それは誰しもがわかることだと思います。
では、実際にどうなるのか?
子どもを否定するような言葉ばかりだと、どうなってしまうのか?
子どもの変形してしまった脳によって、
科学的な事実が本当に見えてくる、そんな本です。
2、発達障害の原因
そこまで深く書かれているわけではありませんが、
発達障害に見える症状が出てくる、ということも指摘されています。
発達障害になるのが先か、
お父さん、お母さんの育て方が発達障害の症状を引き出すのか?
この後先はわかりませんが、
発達障害にならなくてもいいのに、
お父さん、お母さんの言葉が脳を傷つけ、発達障害の症状を引き出してしまいます。
発達障害の人が爆発的に増えている、
その原因の1つがわかる本です。
3、改善方法
親の不適切な教育、マルトリートメントが、子どもの脳を変形させる。
その怖い事実だけをただ書くだけではなく、
今まで、そうなってしまった過去を受け入れて、そして、改善させていく。
その方法についても、書かれています。
子どもの脳を変形させて、発達障害を親が引き起こす、
という目をそむけたい事実を書くだけではなく、
そこから抜け出すためのヒントをくれる本でもあります。
今の事実を受け入れて、
変わろうとするなら、変わることができる。
そんな希望も見えてくる本です。
きちんと救いもある。
勉強をする意味、それがわかる本ですね。
以上が、この本の特徴です。
デメリットはある??
怖い、ということですね。
真実をつきつけられる怖さがあります。
親も人ですから、感情的になってしまうことがあります。
そんな時に、子どもを傷つけてしまうこともあります。
あの時、この子に、悪い子としたな、その記憶が、
この本を読んでよみがえるかもしれません。
あの時のあれが・・・・
この前のあの言葉が・・・・
もしかしたら、あの時、この子の脳にダメージが・・・・
読めば読むほど怖くなりますし、後悔も深くなるでしょう。
それでも、その事実を受け止めて、
これからのために勉強していこうとする。
その強い思いがないと、読み進めるのがつらくなる本だと思います。
買って良かった?
私が、書籍よりも、
「アスペルガーADHD発達障害改善マニュアル」や、
「ASミラクルナビ」をおすすめすのは、
やはり、書籍の書き方は、読者さんに配慮して「ぬるい書き方」になっていることが多いからです。
発達障害に関する本は、
常に、「お母さんは悪くない」という書き方を一貫していて、
いやいや、絶対に、母親が悪いだろ、というケースをたくさん見てきた私としては、
ちょっとぬるいなぁと正直思っていました。
この本も、やたらにお母さんを責めているわけではありませんが、
きちんと、お母さんの言葉によって子どもの脳は傷つきます、と書かれています。
事実であるからこそ、
この本を読んで傷つく人もいるでしょう。
でも、それがこの本の目的ではありません。
傷つくことも、
怖くなることもあるでしょう。
自分の知識のなさや勉強をしてこなかったことで、
子どもの脳を傷つけたと、後悔することもあるでしょう。
それでも、それを受け止めて、親として、成長していこう。
そんな方には、「救い」をくれる1冊になると思います。
厳しい現実をつきつけてくる読み進めるのがつらくなる本ですが、
その分、読み応えのある本となっています。